1. 米国の転学制度
大学間での単位互換、移行が行える転学制度(Transfer System)は、米国大学の特色の一つです。転学制度を上手く利用すれば、自分の希望する専攻科目のある大学に転学したり、よりレベルの高い大学に挑戦することができます。しかし十分な情報収集や吟味をせず安易な気持ちで転学した場合、卒業までにかなりの時間がかかったり、成績が極端に悪くなったりと、マイナス点も少なくありません。転学を将来的に考えている学生は、転学に伴うプラス、マイナス点を良く考え、アドバイザーそして保護者と相談を重ねながら転学するか否かを慎重に見極めてください。
2. 転学の目的、条件、リスク
目的
転学は、より高い修学目的を実現させるためのものであり、以下の目的から逸れる個人的理由による転学は、NCNとして原則勧めません。
- より上位の大学で修学したい
- 現在の在籍大学に、希望する専攻科目がない、プログラムの規模が著しく限られている
- 立地的にインターンシップがしやすい等、修学目的に沿った正当な理由
条件
転学が許可される時期
語学研修コースを修了し、かつFreshman(1年次)での履修が定められた正規科目(約30単位以上)を修了した時期以降とし、これ以前の転学は許可されません。一般的には、Lower Division (1~2年次)の一般教養課程を中心とした、約40~60単位を履修した時期が適切と考えられます。
秋学期からの転学を希望する場合は、早い大学は1年前の10月より、多くの大学は12月~4月にかけて転学用願書を提出することになります。それまでに、受験大学の絞り込み、エッセイ作成、TOEFL受験、推薦状依頼、財政証明書を整えなければなりません。慌てて願書を提出する事態に陥らないためにも、2年次の秋学期、願書提出の1年前から準備を進めます。春学期からの転学を認めている大学もあります。
注意!!
大学によっては、Lower Divisionの転学を受け付けず、60単位以上を取得したJunior Standingでないと転学できないところもあります。一方、既に90単位以上を取得している学生は受け付けない大学もあるので、事前によく調べた上、計画的に転学時期を考える必要があります。各々の条件については、希望する大学のウェブサイトや直接大学に問い合わせて確認してください。
必要書類等
大学によって入学条件は異なるので、各大学のウェブサイトで確認しましょう。 以下は一般的に提出を求められるものです。
- 成績
一般的には、GPA3.0 以上を転学生の受入条件としている大学が多く、上位校になるほどこの基準は厳しくなる傾向にある。 - TOEFL
- 学力水準を測るテスト(SAT、ACT等)
- Prerequisite courses
- 課外活動の実績
- パーソナル・ステートメント、エッセイ
注意!!
上記の入学条件以外に、Music、Theater、 Dance専攻はデモテープ提出やオーディション、Art関連はポートフォリオ提出、Athletic Trainingは実技、ビジネスはSATやインタビュー等、特定の専攻、プログラムに入るための独自の選考基準を課しているところがあります。こうした選考は、入学後行われることもあり、せっかく転学したのに希望するプログラムに入れないケースもあります。どのような形で選考が行われるか、選考に漏れた場合の補欠選考等、転学前に入念にリサーチしておきましょう。
大学によっては、大学への入学に必要なGeneral Prerequisite Courses(通常GEの科目)と、プログラムに入るために必要なPrerequisite Courses(専攻に関連した科目。転学後、履修しても良い場合もある)の両方を定めているところもあるので注意してください。
転学のリスク
転学はより修学目的に適う環境での留学生活を実現できる一方、リスクも伴います。転学によって起こり得るリスクを十分認識した上で、転学を考えましょう。
単位数の喪失
一般的に、語学研修に関する単位は一切移行されません。また、転学後のプレイスメント・テストの結果によっては、履修済みの英語の科目を再履修しなければならない場合もあります。転学先の大学のレベルや転学前に履修した科目のレベルによっては、移行できる単位数がほとんどなかったり、D以下の成績を取った科目は移行できない場合があります。単位移行が認められないと、その分の単位を新たに取得しなければならず、経済的負担や卒業・就職活動の遅れにつながることを留意しておきましょう。
ブランド志向の盲点
難度の高い大学に転学し、転学前の大学との環境の差に自信を喪失してしまった学生もいます。また逆に学部時代に無理のないレベルの大学で才能を開花させ、大学院では知名度の高い優良な大学に進んだ学生もいます。学部の段階で競争が激しい有名大学で学ぶことが最良の選択と言えない場合もあります。知名度の高い大学を卒業しても、成績が悪ければ大学院進学や就職に不利になることを忘れないでください。
3. NCN転学申請手続き
転学希望の通知
転学を希望する学生は、早めに転学指導を受けたい旨を担当アドバイザーに伝える。
転学指導を受ける
担当アドバイザーに個人指導の予約を入れ、転学についてアドバイジングを受ける。アドバイジングに際しては、事前にNCN学生規則の転学の部分を熟読した上、以下の点をきちんとアドバイザーに伝えられるよう準備しておくこと。
- 転学希望の理由(なぜその大学でなければならないのか、希望大学や専攻、プログラム選択の理由、特に興味があるテーマとその理由)
- 希望大学、専攻、プログラムについての情報、トランスファーの条件
- 転学準備のスケジュール、転学後~卒業までのスケジュール
転学許可願いの提出
転学を希望する事由を明記した転学許可願い(エッセイ)を、担当アドバイザーに提出する。
転学審査
アドバイザーが上記の転学許可願いを受理した後、日本事務局で転学の許否が審議される。
転学希望大学への転学申請手続き
許可が出された後、担当アドバイザーからの転学指導を受けつつ、転学希望大学への転学申請手続きに入る。
(以下4.参照)
転学届の提出
転学希望大学から入学許可を得た後、学生本人と保護者名での「転学届」を担当アドバイザー経由で日本事務局に提出する。
4. 転学申請の準備
大学の絞り込み
所在地、授業料、レベル、倍率、専攻科目の充実度、TOEFLスコア等を多角的に考慮し、最終的に3~4校の大学を選択します。その中に合格が確実な大学を1、2校含むようにしましょう。大学を絞り込む上での参考元は次の通り。
- 教授 複数の教授に相談するとよい。
- 大学カタログ 興味のある大学のHPでカタログを確認
- 各種進学情報ウェブサイト ランキングには研究成果なども含まれるため、あまりこだわりすぎないこと。
申請書類の準備
申請内容の確認
基本的にオンライン申請のため、転学希望先の大学の申請案内のページで必要事項を確認する。
Official Transcript(成績証明)
Registrar office に問い合わせ、入手すること。オンライン送付の場合もある。日本の大学から編入している場合は、その成績も必要となる。また、高校の成績が必要となる場合もある。
TOEFL Score
転学希望先の大学コードを確認し、TOEFL公式サイトのアカウントから申請。過去の受験の場合は有効期限に注意。
単位互換認定レポート(必要な場合)
WESなどの単位互換認定に関する第三者機関のレポートを要求された場合は対応機関に発行を申し込む。転学希望先大学のルールを確認すること。
エッセイ作成(必要な場合)
エッセイ提出が求められている場合は、以下の点を踏まえてエッセイを作成する。専攻科目に対する深い理解と、社会貢献的な広がりを持つエッセイを心がける。必ず複数の教授、NCNアドバイザー、ライティングセンターの校正を受けること。
- 専攻選択の理由
- 専攻の中で特に興味のあるテーマとその理由
- 今後の進路計画とその理由
- 何故その大学でなくてはいけないのか
- その大学に自分が貢献できること
推薦状(必要な場合)
B+以上の評価を取得し、自分のことを好意的かつ具体的に記述できる教授に依頼する。専攻科目、関連分野の教授からの推薦状が望ましい。複数必要な場合は、所属している課外活動の顧問教授等に依頼してもよい。早めに依頼をするのが教授への礼儀である。
注意!!
転学に伴う諸手続きは、全て学生の自己責任となります。受入大学への転学に限り、手続きの途中で問題が生じた場合、NCNアドバイザーは合否確認等の側面支援を必要に応じて行います。
5. 転学が決まったら…
転学が決定したら、以下のチェックリストに基づき、転学先に移る準備を進めてください。
転学決定後のチェックリスト
- 大学からの合否結果をNCNアドバイザーに報告する。
- 入学の意思を転学決定大学に通知する。
- 新しいI-20を入手する。(発行通知のメールに添付かメールのリンクからダウンロード)
- 寮の申し込みをする。入寮できないことがないよう、早めに申し込む。
- AIG保険が転学先大学で大学保険免除になるか確認する。ウェーバーが効かない場合、大学保険を購入する。
- 移動の手配。現地に移動する日を決め、航空券の購入や空港からの移動方法を確認し、必要であれば予約しておく。すぐに入寮できない場合は、ホテル等の臨時の滞在先を確保しておくこと。
注意!!
単位移行の交渉をする際に必要となる場合があるので在籍大学のシラバスは捨てずに保管しておきましょう。
6. 受入外大学の学生へのNCNサポート
NCNの受入大学以外の大学への転学する学生は、転学後、NCNサポートセンターより転学生担当アドバイザーによるサポートを受けることになります(同地域の場合は引き続き担当アドバイザーが対応する場合もあります)。オンラインサポートが主体となるため、これまで以上にサポート、指導を受けたいという学生の積極的な姿勢、自主性が求められます。
