1. 新卒の採用方針

アメリカでは、日本国内の企業で見られるような毎年一定数の新卒学生を採用するという方針は基本的には存在せず、業務拡大やプロジェクトの発生、欠員募集等、社員が必要とされたときに職種(ポジション)ごとに募集をします。
このため、特定の就職活動時期も存在しませんが、一般的に学生は、卒業間際か卒業後に就職活動をします。
専攻(勉強内容)と共にスキルや経験が“新卒”であっても重視され、即戦力としての中途採用者と同じ募集枠で選考されます。このために在学中に就職に有利なインターンシップ(有給もしくは無給)を経験し、その「就労経験」を積みます。日本での就職活動以上に、自分を強く売り込むテクニックと粘り強さや、企業の人と知り合うための人脈作りが必要になるので、はっきりとした目的意識を持たずにアメリカのみに絞って就職活動をすることは、大きな危険性を伴います。

2. 就労ビザ・OPT・インターンシップについて

就労ビザ

外国人がアメリカで働く場合、就労ビザ取得という大きな壁が存在します。
就労ビザを取得する場合は"H-1b"という専門職ビザが一般的ですが、このビザが発給される条件としては、以下の3つの条件を満たさなければなりません。

  1. ビザ発給対象者(日本人学生)が、職務経験のない場合、最低でも学士号を取得していること
  2. その職種に対し、最低でも学士号の資格が必要とされること
  3. ビザ発給の対象者(日本人学生)がその職種に即した学位を取得していること

職種に対する学位の基準はアメリカ労働局(U.S. Department of Labor)発行の『職業ハンドブック』(Occupational Outlook Handbook)をもとに判断され、最終的にアメリカ移民局(USCIS: U.S. Citizenship and Immigration Service)が、H-1bビザ発給にふさわしいかを判断します。
仮に企業から内定をもらったとしても、ビザはその年ごとの発給数に限りもあるので、移民局がビザの発給を認めなければ、その企業で働くことはできません。
アメリカ人の雇用を守るために、アメリカ人ができる職務については、基本的に就労ビザは発給しないという考えから、学士号(Bachelor’s Degree)以上を取得し、特定の分野での高い専門知識がある学生以外は、就労ビザを取得するのが非常に難しいのが現状です。

オプショナル・プラクティカルトレーニング(OPT)

留学生はオプショナル・プラクティカルトレーニング(Optional Practical Training、以下OPT)という制度を使って、アメリカ国内で12ヶ月、STEM系専攻については36ヶ月を限度として(ただし企業の協力が必要)就労することが可能です。

Optional Practical Training Extension for STEM Students (STEM OPT)|USCIS(米移民局)

このOPTは大学で学んだことを実践し、母国に帰ってから就職に際して役立つ経験を積む目的のもとに設けられている制度であり、一般的にこの制度を利用する場合は、ほとんどの学生は卒業後に利用します。

注意すべき点はOPT終了後の日本の就職活動では多くの場合において新卒として扱われることがないということです。同時に、本来、売りとなるべきその経験に関しても、OPTでは責任のある職種(ポジション)に配置されることのない“実務訓練”であることから、採用企業側はその経験を実社会での経験としては認めないのが実情です。
このように、“就職に際して役立つ経験を積む”という本来の意図とは違い、帰国後に非常に不利な就職活動となる場合があります。従って、一般企業への就職を前提にしたOPTは慎重な検討が必要です。日本での就職活動に少しでも有利な経験を積む場合は、在学中にインターンシップという形で行うことを優先しましょう。

インターンシップ

大学生が在学中に自分の専攻や将来の進路と関連した就業体験を積む制度をインターンシップといいます。先にも述べましたが、新卒採用枠というものが存在しないアメリカでは、大学生はインターンシップを通じて就労経験を積み、自分の専門分野(専攻)のスキルをつけると同時にネットワーク(人脈)を作って就職活動をできるだけ有利になるように進めるのが一般的です。
大学側も積極的に履修科目の一部としてインターンシップを取り入れ、授業で学んだことを実践する場として捉えており、その期間も短くとも3ヶ月と長期に渡るものがほとんどです。これに対し、日本のインターンシップも就業体験に変わりありませんが、期間が長いものでも2週間前後と、専攻に合ったスキルを見につけるというよりもどちらかというと就職活動前の「体験入社」や選考活動そのものの場合もあります。
これは、企業(業界)をよく理解してもらうことや入社を希望する学生の入社後のミスマッチを防いだりすることに大きな目的があります。ただし、留学生が参加を希望する場合、実施時期と授業期間が重なることがあり、日本のインターンシップ参加ができないがゆえにその企業に応募できないという残念なケースも散見されます。

在学中のインターンシップの注意

留学生がアメリカで有給のインターンシップをする場合、その注意事項としてカリキュラ・プラクティカルトレーニング(Curricular Practical Training、以下CPT)を申請して労働許可を得る必要があります。
このCPTはインターンシップが履修科目上必修、もしくはインターンシップをすることが専攻上望ましいと大学から判断された場合に認められるものです。また、無給のインターンシップであっても、それによりアメリカ人の雇用の機会を奪っていると解釈された場合は、法律に触れることがありますので、アメリカでインターンシップをする場合は、早めに留学生オフィススタッフと相談し、計画をきちんと立てましょう。

3. 人材会社の利用

アメリカで就職を希望する場合には、上記のようにまず企業にビザのサポートがあるかどうか、また、あるとしても募集職種と専攻が合っているかどうか等、様々な条件をきちんと満たしているかを慎重に検討する必要があります。
自分の権利や条件をきちんと守り、企業とのトラブルを防ぐためにも、人材会社の利用も検討してみましょう。

》関連記事:日本での就職